第9章 双つの黒と蕾の運命
ゆらゆらと佇んでいる男の前に太宰が一人、前に出た。男は太宰に気付くと容赦なく触手を伸ばす。ギリギリまで惹きつけた所で、太宰が屈み飛び越えるように葉琉が触手を蹴散らした。
次に出てきた中也が葉琉の着地地点で構え其の儘空高く葉琉を飛ばした。
「おぉー高い!」
中也は触手の上を足場に男に迫り胸に腕を突っ込んだ。
「重力操作」
男は触手ごと地面に貼り付けてられ、中也は勢いで空高く飛んだ。直後、鋭い氷の塊が男を突き刺していく。
「葉月ちゃん、頼むよ」
「はい」
異能力ー氷島
葉月は地面に手を付き異能力を発動した。ーー筈だった。
「!?」
葉月の能力は発動されない。太宰も気付き驚いている。
「嘘…なんで」
葉月はもう一度、次は更に力を込めて発動する。すると能力は発動し、作戦通り男は躰中を氷で覆われた。太宰を見ると険しい表情を浮かべている。
「太宰さん…これって」
「思ったより影響があるようだね」
中也と葉琉は地面に降り立ち、太宰と葉月の元へ駆け寄った。「何かあったのか?」と云う中也の問い掛けに葉月は「ごめんね、タイミング間違えたの」と苦笑を浮かべる。中也は少し腑に落ちない様子たが、次に葉琉に「葉琉は今日の氷デカかったな」と声を掛けた。葉琉は「そうなんだよねぇ」と少し考える素振りを見せる。太宰はその様子を黙って見つめていた。