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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第9章 双つの黒と蕾の運命


ーー戦況は直後に変わった。

氷の砕ける音と共に触手が太宰の石膏帯を引き千切り、間髪入れずにもう一撃飛んで来る。その触手は運悪く葉月にも中る位置から飛んで来た。葉月は力強く地面を踏みしめた。

異能力ー氷島

(お願い、出て…)

葉月の願い通り、数本の氷の柱が葉月と太宰を守るように現れる。しかし、触手は氷の柱を砕き葉月と太宰を吹っ飛ばし木に激突した。

「葉月!」/「治ちゃん!」

威力が削がれていたのと、太宰が葉月を木との間で受け止めてくれた為、葉月は軽傷で済んだが太宰は小さい呻き声を上げている。

「太宰さん!済みません」

長髪男は触手の塊の様な形へ姿を変え、どんどん大きくなっていく。高さは周りの木々をゆうに超えていた。

中也と葉琉は直ぐに駆けつけてくれた。

「葉月!太宰!」

「私は大丈夫、太宰さんが庇ってくれたから。でも、太宰さんが…」

「治ちゃん…!腕が!」

葉琉がハッと息を呑むと中也も目を見張った。
葉月が「いや、これは…」といい掛けた時、太宰は石膏帯の付いていた腕を抑え絞り出す様な声で「葉琉、中也……死ぬ前に…聞いてほしい事が…」と告げる。

「やだ…!治ちゃん!」

「な、何云ってやがる!手前がこんな処で…」

「ばぁ!」

太宰の掛け声と共に引き千切られた石膏帯の処から隠していた腕を出した。葉月は「矢っ張り…」と呟く。
葉琉は中也に太宰を差し出し、中也は太宰の胸ぐらを掴み高々と持ち上げ拳を振りかざす。太宰は「待ち給えよ、君達」と両手を上げている。

「やだなぁ。怪我の身で戦場にでるなら、この程度の仕込みは当然だよ」

「手品してる暇があったら、あの悪夢をどうにかする作戦考えろ!」

中也はビシッと人の形など保っていない触手の塊を指した。
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