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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第9章 双つの黒と蕾の運命


月が綺麗に輝く時間帯、首領はとある寝台の傍で黙って佇んでいた。
扉から広津の気配に気付き「兵は?」と尋ねる。

「御指示通り配備しております。
首領、私は先代首領の頃よりマフィアに仕えております」

「あぁ、広津さんは古株だからねぇ」

「先代の晩年頃、この街の黒社会は荒廃しておりました。病を得てより先代の命令は朝令暮改。ポートマフィアは闇雲に抗争を拡大させ、あのままでは早晩この街を滅ぼしていたでしょう。……あの時、貴方が首領の座を継がねば」

首領は不敵な笑みに鋭い光を宿した瞳で広津を見た。

「何が云いたいのかな?」

「いえ唯、首領の意志は太宰君も理解するところであったろうと」

首領は一度間を置き、壁に飛び散っている血痕を眺め「仮に」と切り出した。

「当時の太宰君に首領の地位簒奪の意志がなかったのだとしても、私の選択は凡て論理的最適解だ。後悔などない。葉琉ちゃんもあのまま此処に居たら『夢の旅人』に組織ごと凡て壊されていたやも知れない。二人を離す必要があった。……だがもし、太宰君と葉琉ちゃんが今もこのポートマフィアに居たのならば組合ごとき……
広津さん、前線への通信機を頼む」

広津は恭しく「既にこちらに」と首領に手渡す。

「探偵社にはああ云ったが、完全な同盟を結ぶ論理解は存在する。同盟の本質とは『先払い』だ。相手の為に先に損を支払い、それが百倍の利となって返ってきて初めて過去の遺恨を超えた同盟が可能となる。
嘗て敵異能力組織を一夜で滅ぼし『双黒』と呼ばれた黒社会最悪の二人組。そして、その二人の元で学び『時の旅人』と呼ばれ黒社会で懼れられた双子。……一夜限りの復活だ」

首領はニヤリと笑い「対組合共同戦線、反撃の狼煙だ」と呟いた。
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