第8章 三組織異能力戦争
葉月は「その通り」と言い空を見続けていた。すると遠い所から爆発音と煙が上がった。
「…始まったようね」
彼方此方で煙が上がり始め、悲鳴が轟く。中也は大丈夫だろうか。不意にそんな思いが頭を過る。無事ではあると思うがこの混乱を鎮めるため、多くの部下を動かしている事だろう。葉月の異能はこういう時には使い勝手がいい。足止めや盾役などは得意だ。本当に申し訳ない事をしたなと思う。でも、この混乱を少しでも早く終わらせる為に…。
葉月の額から汗が滲んでいた。葉琉にも葉月の焦りが伝わったのか、空を見上げ敦を探した。
「国木田君も始まったよ」
下から戻ってきた太宰も空を見上げる。
「国木田さんは大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。何か色々叫んでたけど、録画してきたし」
(それは大丈夫というのか?)
敢えて心の中で突っ込みを入れ三人で空を見上げた。敦を見つけたのは太宰だった。
「!見つけた。葉琉、葉月ちゃん。頼めるかい?」
「太宰さん。私達も久々なため、何れだけの時間を止められるか判りません。ですが、ギリギリまでは止めておきます」
太宰は頷き、走り出した。葉月は葉琉に手を差し出し、葉琉もそれに応えて葉月の手を握った。
「「過去より来りて未来を過ぎ久遠の郷愁を追ひくもの。
いかなれば滄爾として時計の如くに憂い歩むぞ」」
二人を中心に冷気が走った。それは凄まじい速度で広がり、世界は凍りついた。
小さい頃はこの能力をとある実験施設の様な処で遣っていた。ある時パタリと行かなくなったが、その後も巫山戯てよく遣った。当時、施設の連中は二人を『時の漂泊者』と呼んだ。今では『時の旅人』と呼ばれるが、何方も意味は大差ないと思っている。結局二人は人とは違う時を歩むのだから。
何れだけの時間を止めただろ。小さい頃は数秒がやっとだった。それでも遣った後は眠くなり、直ぐに寝ていた。躰の成長が止まり出したのは十秒を超えた辺りからだ。今回は久々な事もあってお互い会話する余裕もなく、能力に集中していた。