第8章 三組織異能力戦争
「初めまして、萩原葉月と申します。葉琉とは双子で私が姉にあたります。何時も妹がお世話になって居ります」
深々と頭を下げてる葉月に眼鏡の男もつられて頭を下げる。
「武装探偵社の国木田です。葉琉さんには何時も助けられております」
その様子を葉琉は唖然と見つめ、太宰は笑いを堪えていた。
「処で、お姉様は何故此処に?」
「太宰さんから私の異能力を使いたいと連絡を受けまして…」
「能力者なのですか。是非我が社の協力者に…」
「国木田君」と太宰は国木田の言葉を遮る様に声を発した。三人は太宰に視線を向ける。
「私に用があったのではないのかい?」
「あ、そうだ。治ちゃん、国木田君の頸元に…」
国木田は襟元を捲り痣を見せた。葉月も太宰も目を丸くした。太宰は葉月に視線を向けた。
「葉月ちゃん、此処を頼めるかい?」
「判りました」
葉月は太宰と交代する様に空を見上げた。太宰は其の儘国木田を連れて階段を降り、屋上には葉月と葉琉だけになった。
「葉月、説明が欲しいんだけど」
葉月は空を見上げた儘「先刻言った通りよ」と答えた。
「昨日、治ちゃんと逢ってたのは葉月でしょ」
「太宰さんに聞いたの?」
葉琉は「勘」とだけ答えた。葉月は思わず「葉琉らしい」と吹き出した。
「相変わらず作戦をちゃんと伝えない人なんだね。これじゃあ葉琉が怒るのも無理ないね。確かに昨日、太宰さんに逢った。でもそれは逢引なんていう可愛いものじゃなくて、今、この瞬間に起きている事への作戦会議みたいなもの。太宰さんは【漂泊者】を遣いたいって言ってきたの。組合はQを使って大勢の人に詛いを発動しようとしてる」
葉琉は暫く考えると「木か…」と呟いた。
「組合の人間に植物と感覚を共有させる人がいるって言ってた。その力とQの能力を合わせたってこと!?それで街中の人に痣がでたんだ…」
葉月は頷いた。
「でも、何故【漂泊者】を?」
「敦君、だっけ?その子も組合に捕まってるそうね。太宰さんは彼が人形を持って落ちてくるのを待ってるみたい」
「そっか。凍らせた時の中を動けるのは私達と治ちゃんだけ。敦君が何処に落ちてくるか判らないんだ」