第8章 三組織異能力戦争
気を抜くと意識を持って行かれそうだった。
「葉月!もう少し頑張って!」
葉琉の声すらも何処か遠くに聞こえる。だが、まだ意識を手放す心算は無かった。
「葉琉、呼吸を合わせて。少しでも負担が減る様に流れを一定に保つ」
「判った」
数分は経っただろうか。葉月も葉琉もお互い限界だった。先に能力が切れたのは葉月だった。脚に力が入らず、崩れ落ちる。
その瞬間、世界は再び動き出した。
葉琉も同じ様に崩れる。二人は背中合わせでお互いにもたれ合い乍座っていた。
「やっぱ久々にやるとキツイね」
ぼそりと呟く葉琉に葉月も「そうだね」と返した。
「治ちゃん、ちゃんと敦君に辿り着くかな?」
「此処まで遣らせて置いて着きませんでしたなんて、許せないな」
小さい笑いが生まれる。
「ねぇ葉琉、怒ってる?私と太宰さんのこと」
「そりゃあ内緒でこんな作戦考えられたんじゃ怒るよ」
「それだけ?」
「……昨日の夜、治ちゃんから葉月の匂いがしたのはなんか厭だったなぁ」
「妬いた?」
「かもね」
「自分の気持ちに気付く事も大事だよ」
「ははっ、まだ私には愛だの恋だのは判らないや」
「葉琉らしいね」
そして、其の儘二人は瞼を閉じた。
二人を屋上から医務室へ運んだのは探偵社の社員だった。太宰が初めから手を打っていたのたろう。
葉月は半日以上目を覚まさなかった。