第8章 三組織異能力戦争
本部へ戻った葉月はその足で中也の執務室へ向かった。中に入ると仮眠を取っているのか帽子と外套が掛けられたまま、主人は不在だ。中也が寝ている隙にと掛かられている外套を弄る。ポケットから煙草を取り出し、その中の一本を手に取り代わりに丸めた紙を入れる。そしてまた、ポケットに煙草を戻した。
仮眠室を除くと矢張り中也は眠っていた。黙って行くと怒るだろうなぁと思いつつも、言ったら止められるだろうなぁという思いから黙って行く事を決めた。だが、緊急事態に葉月を探す可能性は高い。そこで先刻仕込んだ手紙だ。中也の煙草を吸う本数も大体把握している。丁度良い瞬間で手紙を手に取るだろう。中には大まかな葉月の行動予測も入れておいた。怒られる事は判りきっているが、少しでも中也が安心出来るようにと思って書いた物だ。
「行ってきます」
と小さく言葉を掛けて扉を閉めた。