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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第8章 三組織異能力戦争


葉月は一度視線を落とし、上げた。「間違ってはいないと思いますよ」と太宰に笑い掛ける。
太宰はふぅと息を吐くと「暴虐なんて只の手続きだよ」と言い「それに」と話を続けた。

「人は変わるものだ。現に其処の銀ちゃんだって昔はこんなに小さくて可憐な少女だったのだよ?ねぇ葉月ちゃん」

「そうですね。確かに可愛かったですねぇ」

樋口は目を丸くして太宰と葉月を交互に見た。そして最後に銀に視線を向けると少し顔を赤らめている。

「二人共…話を掏り替えないで下さい」

その声は鈴を鳴らすかのように綺麗な物だった。樋口は少しの間思考が停止した。

「しかし腑に落ちないね。合理と論理の権化たる森さんが、こんな茶番に人員を割くとはねぇ」

「茶番ではありません。貴方を守る為です」

「守る?」

「首領は"Q"を座敷牢から解き放ちました」

太宰の表情から余裕が消えた。

「莫迦な。Qに敵味方の区別などない、狂逸の異能者だよ」

「闘争を征する為なら、マフィアは手段を選びません」

樋口の言葉に太宰は鋭い視線を向けた。

「何を解き放ったか判っているのか。あれは呼吸する厄災。何故Qが座敷牢に封印されたか、葉月ちゃんなら判っているだろ?」

「…確かに"精神操作"の異能者は忌み嫌われています。しかし先刻も言った通り、我々は手段を選びません」

「それが葉琉に発動してもかい?」

「……」

太宰ははぁと溜息を漏らした。

「詛いを受けるのは『受信者』のみ。『受信者』になる条件は『Qを傷付けること』。『受信者』の躰には誰かに掴まれたような痣が浮き上がるから判別は容易だ。全員に警戒を徹底させれば今なら未だ間に合……」

此処で太宰は葉月達の目的に気が付いた。態々元部下を寄越し、茶番を行い、Qについての情報まで与えた。

「此処に来た時…『私を守る為』と云ったね?」

三人は何も答えない。その沈黙が答えだ。

太宰は「しまった…!」と急いで元居た駅へ走って行った。

葉月はその背中が見えなくなると「戻りましょう」と歩き出した。樋口も銀も何も言わずに葉月の後を付いて行った。



ーーそれから一週間が過ぎた
組合の男を狙っていたQがそのまま組合に捕らえられた。
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