第8章 三組織異能力戦争
少し歩くと直ぐに目的の人物は見つかった。しかし、葉月は足を止めた。
「エリス嬢、私は此処でお待ちしております。首領を連れて来て頂いても宜しいですか?」
「任せて!」
エリスは軽い足取りで首領の元へ向かった。葉月は急いで物陰に隠れた。首領と話している人物が前の標的だったのだ。
(何故人虎が首領と…?それに…)
人虎と一緒にいる人物に目がいった。
(…鏡花ちゃん)
久々に見る鏡花は何処と無く顔色も明るく元気そうだった。良かった…と心の奥で呟く。
『葉月、仕留めた』
インカムから中也の声が聞こえた。
「判りました。直ぐに向かいます」
インカムを切ったその時、鏡花の後ろに別の人物が現れた。
「…葉琉」
思わず呟いてしまいハッと口元を抑えた。インカムを確認し、通信が切れていた事にホッとする。首領はエリスと一緒に此方に向かって歩いて来た。私の前を通る時「良い判断だね」と呟いた。葉月は直ぐに首領の後を付いていった。
「首領、刺客を殲滅しました」
首領はくくっと笑うと「では、行こうか」と言い目的の現場へ向かった。
首領は路地に入ると機嫌よく話し始めた。
「楽しい一時だった。私も童心に返って、異能で敵をばっさばさと遣っ付けたくなったよ」
エリスは「中年には無理」とバッサリと返す。
「非道い!」
「申し訳御座いません。作戦に気を取られていたとはいえ、敵と対峙していた処を助けにも入れず」
葉月が謝罪すると首領は笑い乍「良いんだよ、エリスちゃんの悪戯に巻き込まれたのは葉月ちゃんなのだから」と答えた。
「それに、私は之でも……」
首領は目的の場所に着くと立ち止まった。其処には先刻まで殲滅対象だった組合の男の死体と、それを囲うように中也、広津、立原、銀、梶井、その他構成員の姿が在った。首領の姿を確認すると全員が膝を付き、首領を敬う。その様子を満足そうに見据える首領は男の死体に視線を移した。
「これが組合の刺客かね?」
「はい」
首領は歩み乍話を続けた。
「探偵社に組合。我々も又、困難な戦局と云う訳だ。最適解が必要だね。組合も探偵社も、敵対者は徹底的に潰して、殺す」
路地裏に短い返事が木霊した。