第8章 三組織異能力戦争
葉月はエリスに手を引かれ歩いていた。次々に入る情報を頭で纏め乍、指示を出す。
「広津さん、其の儘追ってください。立原君は東から。梶井さん街中での檸檬投下はやめて下さい。中也さん、F地点に追い込みます。待機して下さい」
『おい、銀!前走るんじゃねェ!』
『うはははははは!僕の科学実験に…』
『うッせぇぞ、梶井!黙って言うこと聞いてろ!』
『若者は余裕があって…』
(やだもうこの人達に指示出すの…)
葉月は僅かに頭痛がした。不意にエリスが立ち止まる。
「エリス嬢、如何なさいました?」
エリスは振り向きにっこりと笑う。葉月は慌てて後ろを確認する。先刻まで居たはずの首領の姿が消えていた。
「エリス嬢…これは…」
葉月の額に冷や汗が滲む。
「リンタロウを虐めたくなった」
けろっと答えるエリス。これはエリスの悪戯だった。葉月の頭痛は更に酷くなった気がした。
「エリス嬢、戻りましょう。今は任務中ですし、首領も心配していると思いますよ」
「葉月が言うならしょうがないわね」
エリスは笑い乍、葉月の手を引いて来た道を戻った。