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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第6章 時として望まぬとて


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私は震える葉琉を抱きしめ続けていた。自然と涙が頬を流れる。
ーー元気にしてた?風邪ひかなかった?ご飯食べれてる?辛くない?
聞きたいことは山程あった。しかし、最初に出た言葉は何れでもなかった。

「葉琉…ごめんね」

葉琉はピクリと反応した。そして、首を横に振り「謝らないで」と言った。

「葉月を責めるように別れて、私も後悔したの。あの時、私おかしくなってた。後で治ちゃんに言われて気付くなんて莫迦過ぎるよね。ごめんなさい。この四年間、私は葉月にずっと重石を乗せてたよね」

葉琉の言葉は私が想像していたものと違った。真逆葉琉から謝られるとは思っていなかったからだ。私はゆっくりと葉琉の目隠しを外した。其処には昔と変わらない、真っ直ぐな瞳があった。

「私、葉琉に恨まれてると思ってた。もう私の顔なんて見たくないだろうなって。でもあの時、私を見つけて走ってたのみて、もしかしたら違うんじゃないかって思ったの」

「葉月、気付いてたの?」

「勿論だよ。見なくても葉琉だって直ぐ判ったよ」

葉琉は拗ねたように「だったら応えてくれても良いじゃん」と言った。その姿にふふっと笑ってしまった。

「ごめんね。何を話して良いかも判らなかったし、あの時は敵同士だったじゃない」

葉琉は寂しそうな表情を浮かべる。そして「ねぇ」と俯き乍、掠れる声で呟いた。

「一緒に行こうよ、敵なんてヤダよ。ねぇ…おねがい」

子供の様に縋り付く葉琉の頭を優しく撫でた。「ごめんね」と応えると小さく震え乍、首を横に振った。

「先に治ちゃんを選んで離れたのは私だから……葉月も此処に大切なものがあるんだよね?」

「…うん」

私の答えに葉琉は顔を上げた。その顔は新たな決意を宿した物だった。

「葉月。私ね、探偵社に入って新しい仲間も沢山出来たんだよ。任務でね、人助けもしてるの」

「うん」

「先刻、首領に戻って来ないかと聞かれたの。【漂泊者】を使いたいからって。でも私、探偵社に戻りたい」

戻りたい。それはもう葉琉の心は此処には無い事を示していた。今まで葉琉は、何時だって他人に付いて行く事が多かった。マフィアに入った時も、抜けた時も、私や太宰さんに付いて行く様な形だった。
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