第6章 時として望まぬとて
中也は太宰を繋げていた鎖を壁ごと蹴り砕いた。
「手前が何をたくらんでるか知らねぇが、これで計画は崩れたぜ。
俺と戦え、太宰。手前の腹の計画ごと叩き潰してやる」
「……中也」
太宰は両腕を見える位置に上げると指を鳴らした。同時に両手首に嵌っていた枷が音を立てて落ちていった。
「君が私の計画を阻止?…冗談だろ?」
余裕の笑みを浮かべ、ヘアピンを弄ぶ太宰。
「何時でも逃げられたって訳か。良い展開になって来たじゃねえか!」
中也は飛びかかる様に太宰に攻撃を仕掛けた。太宰は幾多もの攻撃を全て躱す。そして、中也の腕を捉え腹に打拳を入れた。
「何だその打拳」
中也は顔色一つ変えずに太宰を蹴り飛ばした。
「按摩にもなりゃしねぇ。立てよ。招宴は始まったばかりだぜ」
「…流石はマフィアきっての体術使い」
太宰は笑い乍立ち上がる。「防御した腕がもげるかと思ったよ」と、腕を伸ばしている。
(寸前で腕を掲げ防御したのか。攻撃を読まれているな)
「君とは長い付き合いだ。手筋も間合いも動きの癖も、完全に把握してる」
中也は先刻よりも力強く地面を蹴った。
「だったらこの攻撃も読まれてるんだろうなぁ!」
勢いに乗せた拳が太宰の顔に中り、殴り飛ばされた。太宰は何とか踏み止まる。
「打拳ってのはなぁ!こうやって打つんだよ!」
中也は攻撃の手を休めることなくもう一発、次は腹に向かって打ち込んだ。そしてそのまま、首を掴み壁に押し付けた。
「終いだ」
短剣を取り出し太宰に突きつける。
「最後に教えろ、態と捕まったのは何故だ。手前の大事な葉琉まで巻き込んで、何を待っていた」
太宰はなにも答えない。
「だんまりか。いいさ、拷問の娯しみが増えるだけだ」
「…一つは敦君についてだ」
「敦?」
「君達がご執心の人虎さ。彼の為に70億の賞典を懸けた御大尽が誰なのか、知りたくてね」
「身を危険に晒してまで?泣かせる話じゃねえか。手前を信じて付いてった葉琉も報われねぇなァ。歴代最年少幹部さんよ」
くくっと太宰が笑い出した。