第6章 時として望まぬとて
「……少し救われました」
「少しだけかい?」
太宰は微笑んでいた。それはあの頃とは違う優しい笑みだった。
「太宰さんは私と葉琉が仲直り出来るように、葉琉を連れてきてくれたんですね」
「葉琉があまりにも辛そうだったからね」
「本当、葉琉の為なら何でもしますね。それで、見返りは葉琉の救出ですか?もし、私がマフィアを追われたら責任取ってくださいね」
「大丈夫さ。君には憎たらしいちっちゃいのがついる。それに、私が此処から出られないとでも思っているのかい?」
「判りました。全て太宰さんの所為にしておきます」
いつの間にか葉月も笑っていた。葉月はくるりと翻り、「有難う御座います」と呟いて部屋を出た。
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私は葉琉のいる牢の前まで来た。目の前には目隠しをされ、両腕を組むように縛られて、床に座っている妹の姿。異能力を封じる為、薬まで打たれたと聞いた。私はその光景に唇を噛んだ。そして、「葉琉」と呟いた。
「…葉月」
葉琉は私の声に反応した。そして、目隠しの下から一筋の雫が零れた。堪らず扉をあけ、葉琉を抱きしめた。