第6章 時として望まぬとて
「中也、麻薬密売人の件について何だけど…」
資料を手に中也の机に向かった。資料を手渡すと黙って読み始めた。
「決行は今日の夜、規模は十数人です。態々、幹部殿が出なくても私達で潰しておきますよ」
中也は少し悩んでから「じゃあ頼む」と資料を戻した。一応、礼儀的な一礼をして自分の席に資料を仕舞った。そして、足早に扉に向かった。
「一寸出ますね」
「おう」
何もかも判っていて何も訪ねてこない中也の優しさに、また甘えてしまった自分に怒りを覚え乍、部屋を出た。
そのまま真っ直ぐ、元上司の元へ向かった。