第6章 時として望まぬとて
葉月が入ると鏡花も続いて入ってきた。この雑貨屋には鏡花が付けている携帯の兎のストラップと似た動物のマスコットが置いてあった。鏡花はまじまじと店内を見ていた。心なしか、表情が明るくなったような気がした。
「何か気になる物あったかな?」
「……あれ」
鏡花が指したのは動物のマスコットだった。兎、犬、猫、狐と四種類ほど有った。葉月はその中の猫を手に取った。
「猫、好き?」
「嫌いじゃない」
葉月は笑いながら会計に向かった。そして、鏡花と一緒に店を出た。店を出ると葉月は先刻、買ったばかりの袋を開けて猫のマスコットを取り出した。
「鏡花ちゃん、貰ってくれる?」
「…いいの?」
葉月は鏡花の携帯に猫のマスコットを付けた。
「鏡花ちゃんに貰ってほしいの」
鏡花はまじまじと猫のマスコットを見つめた。
「有難う。でも、なんでここまでしてくれるの?」
その質問に葉月は少し悩んだ。
「私ね、妹がいるの。それで歳下の鏡花ちゃんが気になったのかな」
鏡花は切なそうな表情を浮かべた。そして、俯いた。
「……私の標的が、貴女に似ている」
「…それって…暗殺の?」
「ううん。捕らえて来いとの命令」
「…そっか」
葉月は空を見上げて小さく呟いていた。
顔を鏡花に戻し、何時もの笑みで「そろそろ帰ろっか」と告げて二人で本部に戻った。