第6章 時として望まぬとて
翌日、約束通りお昼前に鏡花を迎えに行った。
「鏡花ちゃん、行こうか」
無言でコクリと頷いて後に付いてきた。昨日も思ったがとても可愛い子だ。黒髪を二つに結び、幼い乍着物も着こなしている。たぶん、洋服も合うのだろう。そんな事を考えていると鏡花の方から声をかけてきた。
「何処に行くの?」
そう言えば決めていなかった。葉月は慌てて鏡花に尋ねた。
「鏡花ちゃんは何が食べたい?」
「……橘堂の湯豆府」
「湯豆府いいね。行こうか」
「うん」
少し気を許してくれたのか始めて返事が来た。葉月は鏡花を連れて橘堂へ向かった。
ーー橘堂ーー
「どう?美味しい?」
「うん」
まるで小動物のように豆府を頬張る鏡花を葉月は微笑んで見ていた。鏡花の事は噂で聞いていた。姐さんに付いてから六ヶ月で三十五人殺したという。異能も暗殺向きで才能に溢れているらしい。葉月にはとてもそんな子には見えなかった。美味しいものを食べている姿は年相応の女の子のモノだった。
「葉月さん、食べないの?」
「え?」
自分の箸が止まっていた事に気が付いた。慌てて食事を再開する。食事が終わると、とても満足そうな顔をしている鏡花。時計を確認するともう少し時間がありそうだった。
「ねぇ、鏡花ちゃん。もう少し付き合って貰ってもいいかな?」
「うん」
少し歩くと雑貨屋に着いた。