第6章 時として望まぬとて
コンコンー
「萩原です」
ガチャリと扉が開くと樋口が顔を出した。
「葉月さん!体調は大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ、樋口ちゃん。心配かけてごめんね。それで、芥川君いる?」
「先輩はいま出ています。すぐ戻られると思いますが、待たれますか?」
「じゃあ、そうしようかな」
樋口に通されて中に入った。ソファに座ろうとした時、奥の方にいる鏡花に気が付いた。葉月はソファに座る前に鏡花の元へ行った。
「鏡花ちゃん。私のこと覚えてるかな?半年前くらいに何度か遭ってるんだけど」
鏡花はこくりと頷いた。だが、目を合わせようとはしてくれない。
「鏡花ちゃん、明日って任務とかあるのかな?」
「…夕刻から…あります」
「そっか。なら明日一緒にお昼ご飯行かない?」
にっこりと笑いかけた私を、鏡花は漸く見てくれた。驚いて次の言葉に迷っている表情だった。
「葉月さん、芥川先輩が戻られました」
樋口の声に振り返ると芥川が此方を見ていた。葉月は芥川に近付くと頭を下げた。
「今日はご迷惑をお掛けしました」
「葉月さん!やめてください。頭を上げてください」
芥川は慌てて葉月の肩を掴んだ。葉月はゆっくりと顔を上げた。
「それで謝罪の後で申し訳ないのだけれど、お願いがあるの。明日の昼時、鏡花ちゃんを連れ出して良いかしら?」
「鏡花をですか?構いませんが、如何して急に?」
「姐さんに頼まれてね。鏡花ちゃんが心配みたいなの」
その後少しだけ芥川と話して部屋を出た。執務室に戻り書類整理に戻った。