第6章 時として望まぬとて
その日の内に人虎捕獲の担当から外された。
表向きの理由は中也がいない間の書類整理。だが、本当の理由は人虎のいる探偵社に葉琉がいたことだろう。葉月は中也の執務室に一人、書類整理を行なっていた。考えなければいけないことは沢山ある。しかし、今は考えたく無かった。
ひと段落が付いた丁度その時だった。
コンコンー
「私じゃ、葉月」
扉の奥からは聞いたことのある声。葉月は急いで扉を開けた。
「姐さん!何か任務ですか?」
姐さんは「少しばかり顔を見たくてな」と答えた。葉琉の話を聞いたのだろう、何処か悲しい表情を覗かせている。
「姐さん、私は大丈夫ですよ。葉琉が光の世界に行く事が判った時、何れ対峙するのではと思っていました」
「こんな時で済まぬが、葉月に頼みたい事があってな。芥川の奴めに鏡花を取られてな…明日で構わん、様子を見てきて欲しいのじゃ」
「そんな事ならお安い御用ですよ、姐さん。私も書類整理ばかりで飽き飽きしていましたから」
笑って答えると姐さんは少し安心したように「頼んだぞ」と言って戻って行った。善は急げと遊撃部隊の部屋へ向かった。