第5章 虎穴に入らずんば人虎を得ず
移動中、探偵社の三名は緊張感なく戯れ合っていた。そんな三名を見向きもせずに樋口は目的の場所に向かう。「着きました」と伝えると更に路地へと入って行った。少し歩くと違和感に気付く者がいた。人虎と一緒について来た赤毛の少年である。
「……おかしい。本当に此処なンですか?ええっとー」
「樋口です」
「樋口さん。無法者というのは臆病な連中で、大抵取引場所に逃げ道を用意しておくモノです。でも此処はホラ、捕り方があっちから来たら逃げ道がない」
少年は先刻通って来た道を指す。
樋口は三名に向き直った。
「その通りです。失礼とは存じますが、嵌めさせて頂きました。私の目的は貴方がたです」
先刻までの雰囲気とは違い敵意を剥き出しにする樋口は、下ろしていた髪を上げ電話を掛けた。相手は直属の上司。
「芥川先輩?予定通り捕らえました。これより処分します」
『重畳、五分で向かう』
芥川という名前を聞いて青ざめる三名。その三名に樋口は容赦なく短機関銃を向けた。
「我が主の為、此処で死んで頂きます」