第5章 虎穴に入らずんば人虎を得ず
「先ず、樋口ちゃん。武装探偵社について調べられるだけ調べて頭に入れて。そして、依頼人を装って探偵社に潜入し人虎を此処に連れてきて欲しいの」
そう言って一枚の地図を渡す。
「依頼の内容は…危なそうな人がいます的な…そんな感じがいいかな」
「葉月さん、理由が大雑把過ぎます」
樋口ちゃんは苦笑している。
「芥川君はこの後別の任務があったよね。それが終わる頃を目指して作戦を決行しましょう。いい?芥川君」
「判りました」
「葉月さんは待機ですか?」
樋口ちゃんが尋ねてくる。
「何かあったら対応出来るように近くにいるよ。二人共、宜しくね」
「はい」
「宜しくお願い致します!」
こうして、即席ではあるが人虎生け捕り作戦の準備が整った。
● ● ●
「ここが武装探偵社…」
何時もは纏め上げている髪を下ろし、樋口は探偵社の入口の前に立っていた。扉の前で深呼吸をし、ノックをする。
扉から顔を出したのは事務員と思われる女性。樋口は淡々と事情を説明し、中に通された。
「担当の者が席を外しておりまして、もう暫くお待ち下さい」
「判りました」
応接用に区切られた一画で椅子に座り担当者とやらが来るのを待った。