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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第5章 虎穴に入らずんば人虎を得ず


ーーポートマフィア本部最上階ーー


「お帰り、葉月ちゃん。長期出張は楽しめたかね?」

不敵な笑みを浮かべ乍、ポートマフィア首領森鴎外は尋ねた。

「はい。とても実りのあるものでした」

葉月の返答に満足気に笑みを浮かべている。

「まだ君を失う訳にはいかないからねえ。あまり無理をしないで欲しいものだ。ところで葉月ちゃん、芥川君と組むのは久しぶりだけど出来そうかい?」

「はい。問題有りません」

「宜しい。何も無ければそのまま芥川君と人虎探しをしてくれ給え」

「畏まりました」

葉月は恭しく一礼をして首領の執務室を後にした。



● ● ●



その報せは芥川君との打ち合わせ中に届いた。

「芥川先輩!人虎が発見されました!」

走って来たのだろう。息を切らしながら樋口ちゃんが飛び込んで来た。

「五月蝿い、樋口。打ち合わせ中だ」

「否、待って芥川君。結構大事な連絡だと思うよ。それで樋口ちゃん、その人虎は何処に居たの?」

「昨晩、武装探偵社が捕らえたとの情報です。今は武装探偵社が匿っていると思われます」

武装探偵社。噂には聞いた事があった。何でも、荒事を中心に引き受ける武装集団。その多くが異能力を持っているとされている。

樋口ちゃんの言葉を聞いて芥川が立ち上がった。

「芥川君、何処行くの?」

「僕はただ任務を熟すだけ」

「はい、ストップ。芥川君ストップだよ。樋口ちゃんも便乗しない。銃は仕舞ってね」

今にも部屋を飛び出し、武装探偵社に突入しそうな芥川君と樋口ちゃんを口頭で制した。

「何故です、葉月さん。探偵社如き僕が…」

「相手は異能集団よ。多勢に無勢、大人数を相手にすると流石に不利だよ。被害は出来るだけ抑えたいの」

芥川君は渋々席に戻った。樋口ちゃんも銃を仕舞った。
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