第1章 月に吠える
「……異能力の訓練はしていたので…。
あとは、一人殺して仕舞えば同じだと…。
お父さんたちが襲われた日、私たちも近くにいたの。
その時に一人…。あとはお父さんに促さるまま
時間を止めて逃げたの。
しばらくして戻ったら…お父さんも…お母さんも……。」
葉月は泣き崩れた。葉琉が優しく抱きしめる。
「その後は、お父さんの持っていた資料から葉月が考えて復讐すること決めたわ。
もう、何も知らなかった頃には戻れないもの。」
葉琉は抱きしめた葉月の頭を撫でながら答えた。
中也がハッとして二人に視線を戻た。
「つまり…先刻の瞬間移動みてェな現象は
その時間を止めた事によるものってことか?」
「其の通り!中也にしてはよく気がついたね!」
太宰は中也を揶揄うように拍手する。
中也の蹴りが弧を描いて飛んできたが
太宰はヒラリと躱して続けた。
「その姿は、異能力の副作用、だね?」
太宰はほぼ確信していると云った様子で尋ねてきた。
葉琉はため息混じりで答えた。
「…其の通り。時間を止めると身体の時間も止まるみたいなの。お陰で身体はまだ10歳くらいよ。漂泊者…時を止める力を使わないとちゃんと成長するのよ。
あ、いまは精神的には15歳だから。」
葉月も落ち着きを取り戻し太宰と中也に視線を向けた。
「私たちは…あれから2週間沢山の人を殺してきました。
正直自分たちでも信じられません。
でも、まだ復讐は終わっていない。
……太宰さん。私たちをポートマフィアに入れていただけないでしょうか?」