第4章 西方組織抗争
葉月が壁に吹っ飛ばされるのをみて、ユートピアの首領は高笑いをした。
「中原幹部、君の選択ミスだ!君のせいで部下は死ぬ!」
だが次の瞬間、眼鏡の男の顔面に葉月の氷が炸裂した。
余りに綺麗に決まったので中也も笑ってしまった。
「俺の部下が死ぬ?無ぇな。確かに葉月は戦闘向きじゃねぇ。だがな、葉月には其れを補う頭がある。常に冷静に対処できる」
画面の中の戦いは最終章を迎えていた。葉月が地面を凍らせて男が身動きを取れなくなっていた。
「ほらな。王手だ」
中也がニヤリと笑うと同時に葉月は拳銃を撃った。
其処で映像は途切れた。
「さてと」と中也は立ち上がった。
「俺達も終わりにしようぜ。もう何も残ってねぇんだろ?」
「くっ!お前も行け!」
男は傍らの女に命令する。
「畏まりました、旦那様」
女は中也の前に立ち塞がる。
「…女を殺すのは目覚めが悪ィんだよな」
「随分紳士なこと言うのだね!中原幹部!だが、そんな事を言ってると私は捕まえられない!」
そう言うと男は走って逃げていった。
「あ!?おい!」
追おうとした中也を女が制止する。
「退けよ」
「通すわけにはいきません」
二人は睨み合う。だが、直ぐに中也が仕掛け、目の前の女に打拳を繰り出す。中ったと筈の拳は煙に巻かれる。其処に女の姿は無かった。
「私はこっちです」
後ろからの声に振り返る。
「チッ!分身の異能者か」
後ろには女が六人いた。皆同じ女だ。
「貴方の攻撃は中りません」
「面倒くせぇのがでてきたぜ」
女は中也を囲んだ。中也は素早い攻撃を仕掛けた。だが、攻撃の中った女は煙の様に消える。
「キリがねぇな」
そう言うと、床に轢かれていた絨毯を思い切り剥がす。そしてそれを女に向けて投げつけた。
異能力ー汚れつちまつた悲しみに
絨毯は中也の思い通りに六名の女を纏めて締め上げた。
「全員纏めて攻撃しちまえば何れか本物だろ?」
言葉通り絨毯の中の五名は消え、一名残った。其れが本物の様だった。中也は無言で絨毯を締め上げた。
「…っく!」
女は顔を顰める。
「そのまま大人しく寝とけ」
更に硬く締め上げると女はガクンと項垂れ大人しくなった。
中也はそのまま振り返り、先程逃げた男を追った。