第4章 西方組織抗争
中也は階段を上がった。下からは葉月が差し向けた部下が来る。雑魚は任せても大丈夫だろう。
そう思い進んで行く。
奥の扉を開けると偉そうな男がソファに腰を掛けて座っており、傍らには長髪の若い女が立っていた。
「ポートマフィアの中原幹部ですね?」
男は切り出した。たぶんこの男がユートピアの首領だろう、と直感した。
「だったら何だ」
「取引しよう」
「取引だと?」
男はにやにやしながら中也に向かいの席を勧めた。
中也は大人しくそのソファに腰を掛けた。
「ンで、取引の内容は?」
「我々ユートピアをポートマフィアの傘下に入れてください。
我々はこの地域では最大の組織です。お役に立てると思います」
「却下だ。手前らみないな組織傘下にしたところでウチにメリットが無ぇよ」
男は眉間に皺を寄せながら悩んでいる様だった。
「ならば金でどうだ!?幾らでも出そう!」
「ウチはマフィアだぜ?商人じゃねぇんだ。暴力は暴力で返す」
男の表情から段々と余裕が抜けていく。
遂に男は床に這い蹲り中也に頭を下げた。
「許してください!全てあの男の仕業なんだ!あの男が来なければポートマフィアに喧嘩を売る事もなかったんだ!」
あの男、とは参謀に雇った男の事だろう。葉月から手を引いたと聞いたが本当の様だった。
「あの男が全て悪いんだ!あの男が…!」
「おい」
中也は冷たい目で男を見た。
「手前先刻から何言ってンだ?それでも組織の長かよ。手前がそんなんなら、俺が手を下さなくても近い将来消えそうだな」
中也は立ち上がり、男の前まで行くとしゃがんだ。
「だが、其れはまた別の話だ。俺はケジメとして手前を殺さなきゃならねぇ」
男は中也を睨んでいた。先程までの弱気な態度から一変した表情だ。そして、叫んだ。
「ならば仕方がない!お前の大切な部下が死ぬだけだ!」
そう言い立ち上がり近くにある画面をつけた。其処には隣のビルの最上階が映し出されていた。
「……葉月」
中也が呟いた。画面には丁度部屋に辿り着いた葉月の姿があった。その向かいには眼鏡をかけた男がいた。たぶんユートピアの仲間だろう。二人は戦闘を始めた。