第4章 西方組織抗争
ーー敵拠点ユートピアーー
「クソッ!何故あの男はいなくなった!?
此れでは契約違反ではないか!」
今、怒鳴り散らしているのはユートピア首領の男である。
「首領、落ち着いてください!」
「これが落ち着いていられるか!このままだとポートマフィアに消されてしまう!今まで大人しくしていたのが水の泡だ!
クソッ!何故こんな事に…」
● ● ●
あれは一年ほど前だった。あの男は急に現れた。
男は何やら探し物をしている様子だった。
「ポートマフィアに私の探し物があってね。其処を潰すのを手伝う代わりに此処に置いてほしい」
何処か気味の悪い笑顔を浮かべた男だった。
傘下の電網破りに男の素性を調べさせた結果、奴が伝説の【夢の旅人】である事がわかった。男は本当の名は忘れたと言っていた。我々には【大鵬】と名乗った。
それからは大鵬の指示で動く事が多かった。大鵬の指示は何れも的確で、気がつくと多くの組織が傘下に加わっていた。
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「旦那様。落ち着いて下さい」
首領の傍にいた若い長髪の女性が首領を抑える。
「クソッ…クソッ!」
首領は俯き乍呟いていた。
「首領、こうなってしまったのはしょうがないです。
何れは戦う相手、少し予定が早まっただけです」
首領の目の前に恭しく一礼をしている眼鏡を掛けた男が言った。
首領は何も返さない。
「此処には我々がいます。戦力は此方の方が多いです。
ポートマフィア側は異能者が二名、此方は三名です。
それに、戦闘員の数も此方は倍はいます。
難しい状況ではないかと」
首領は顔を上げて眼鏡の男を見た。
「はははっ!その通りだ!我々が負けるはずがない!
全員に伝えろ!迎え撃てと!」
眼鏡の男は一礼をしてその部屋を出て行った。