第2章 【刀剣乱舞✕もののがたり】 岐の血とは恐ろしい。
「だから泣くな。もう大丈夫だから」
言い方がキツくなってしまったかもしれないが、これが私の本心だった。
コツンと五虎退の額と自らのそれをくっつける。
彼がもう泣かなくていいよう願いながら。
苦しまなくていいように。
「はいっ」
私の言葉に驚いていた彼は、いつの間にか嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。
その様子を自分のことのように喜ぶ三人。
良かった良かったと言い合うのをそこそこに、小虎を抱えたまま近寄ってきた。
「不思議なこともあるものだね」
そう言う吹枝と爪弾の抱えている小虎は、あのみすぼらしい姿が嘘のように今やその美しい体毛を輝かせていた。
どういう原理かさっぱりだが、怪我は治ったらしい。
怪我が治って元気になったらじっとしてられないようで、二人の腕の中でうずうずとしている。
あまりにもぞもぞするため、二人は苦笑いしながら小虎たちを降ろしていた。
早速降ろしてもらえた小虎たちは、小走りで五虎退に駆け寄っていく。五虎退は嬉しそうに抱き上げていた。
そして、何かを思い出したのかハッとした顔をして私を見た。
一瞬言いづらそうに口を噤んだが、意を決したらしく凛とした面持ちで言った。
「い、いち兄を、みんなを助けてくださいっ」
どうやらまだ始まったばかりということらしい。
END