第7章 ☆【ハリーポッター✕魔法使いの嫁】蝙蝠と石切蜂の馴れ初め
「お父さんとお母さんってどっちが先に好きになったの?」
息子の突拍子のない質問に、口に含んだばかりの紅茶を噴き出すところだった。
噴き出す代わりに噎せてしまったが。
盛大に噎せた私を見て、娘が背中をさすってくれた。
「ちょっとヨセフッ」
「どうして怒るのアルシア。だってお母さんが先に好きになったとは思えないんだもん。だからお父さんかなーって思ったんだ。違うかな」
お兄ちゃんも言ってたよと無邪気に笑うヨセフ。
私が噎せたことを心配し、注意するアルシアのことなど微塵も気にもとめていないようだ。
こうも天然発言をし、周りを良く見ないところは一体誰に似たのか。
アルシアはそういう事が言いたいのではないと思うが。伝わっていないようだ。
そもそも。
どうしてそんな事を聞くんだ。
どうして兄弟間でそんな話題が出るんだ。
おかしいだろう。
嗚呼、でも。
ヨセフが言っていることが間違っていないだけに言葉もなかった。
最初に言ったのは我が長男か。
いやしかし。
答えたくない。
もはや恥晒しと言っても過言ではないそれを、そう易々と教えたくはない。
ここは黙秘しておこうと視線をずらす。
だが、ヨセフは引き下がる気はないようだった。
むすっとして何やら一枚の紙を私の目の前に突き出した。
「宿題なの!」
突きつけられた紙には大きく『お父さんとお母さんの出会いを聞いてみよう!』と書かれていた。
どんな宿題だ。
なんて宿題だ。
誰だ。こんなわけの分からない宿題を考えたのは。
気まずそうにこちらを見ようとしないアルシアも、後ろ手に紙を持っているからおそらく同じものだ。
ここで私が答えなかった場合。
期限までに宿題を提出しなくてはならない二人は、母アンジェリカに聞きに行くのだろう。
それこそ、何としてでもあれやこれや根掘り葉掘り。
それだけは勘弁だった。
過去の私が如何に愚かで稚拙であったかなど、オブラートに包もうともしない正直なアンジェリカが喋ってしまうだろう。
恥ずかしくて穴があったら入りたい程のことだとか。
隠したい、忘れてしまいたいくらい悔しかったことだとか。
その他諸々。
彼女が嘘をつく質ではないと分かっていたとしても、それだけはいただけない。
さて。
どうするか。
少しの間悩んでみたが、自分で話した方が心の傷はいくらか浅いだろうと判断した。