第4章 【ワンピース✕亜人】殺人鬼の娘
そして、先程とは比べ物にならないくらいブワッと弾けた黒い粒子は、あっという間に黒い幽霊をかたどる。
そのおびただしい数といったら。
一体二体なんて数じゃねぇ。
ざっと二十くらいだろう。
形成を終えると、ちらっとレナの方を見る黒い幽霊。
視線を集めるレナは、にんまり笑って一つ頷いた。
ギザギザの鋭い歯の生えた口をがばりと開け、おぞましい勢いで跳んでいく黒い幽霊。
跳んで行く先は全て海軍の奴らのもと。
何が起こっているのか分からず、どこに逃げればいいのかも分からない海軍ども。
黒い幽霊は、悲鳴を上げ泣きながらめちゃくちゃに逃げ惑う奴らにあっけなく追いつき、首をはねる。
中には、踏み潰された奴もいた。
なんだこれは。なにをしてんだ、レナ。
まるでゲームでもしているかのような。
満面の笑みのレナは凄く楽しそうだった。
嗚呼、地獄絵図ってこういうことを指すんだと、こんな時にしみじみ思った。
ただ、どんなに地獄絵図でも黒い幽霊は白ひげ海賊団の奴や、ルフィが連れて来た海賊の奴を殺すことはなかった。
むしろ、掴んで船の方に投げてるような。
逃がしてるつもりなのか?
もういいから、早く来いよ。
一緒に逃げよう。
そう言えたら。
声を出せないままじっと見る。
と、想いが通じたのかくるっと振り返るレナ。
自分を守っている黒い幽霊に何か言ったかと思えば、ぐわしと胴を掴まれた。
振りかぶった黒い幽霊は、そのまま、投げた。
は?投げた?
投げられた勢いを殺すことなくモビーに向かって飛んでくるレナ。
このままじゃッ。
俺はレナを受け止めるべく走った。
なんてむちゃくちゃな救出劇だと苦笑いしながら。
END