第4章 【ワンピース✕亜人】殺人鬼の娘
エース side
赤犬の言葉が許せなかった。
オヤジを侮辱するその言葉が、どうしても許せなかった。
“兄たち”の制止を振り切りって、アイツに向き直る。
取り消せって言ったのに取り消す気のねぇアイツがすげぇムカついた。しかもさらに侮辱しやがった。
殴ってやるって思った。
腰抜けだと?敗北者だと?茶番劇?
ふざけんじゃねぇ!!
オヤジのこれまでを、俺たちとの時間を空虚だと!?
バカにすんのもいい加減にしろ!
どんなに俺たちがゴロツキだろうと、人間(ヒト)でなかろうと、息子や娘と呼んで愛してくれるオヤジの何が解る。
オヤジの心の奥底に眠る本当の気持ちの、何を知ってるってんだ?!
オヤジは俺達に生きる場所をくれたんだ。
何も知らねぇお前に、オヤジの偉大さの何がわかる!
そう言ったところで、赤犬は鼻で笑っただけだった。
正しくなきゃ生きる価値がねぇだと?
海賊に生きる場所はいらねぇだと?
なんでお前に指図されなきゃいけねぇんだ!
自由に生きちゃダメなのかよ!!
腹立たしいことをつらつら言った挙句、さらに腸が煮えくり返るようなことを続けて言いやがった。
「“白ひげ”は敗北者として死ぬ!ゴミ山の大将にゃあ誂え向きじゃろうが!」
自分は間違ってないとばかりに言い切る赤犬。
今度はゴミ山の大将だと!?
ふざけんな!
「“白ひげ”はこの時代を作った大海賊だ!この時代の名がッ“白ひげ”だ!!」
互いに拳を振り上げた。ここが正念場だ!
ぜってぇ、膝をつかせてやるッ!
いつもより炎を纏った拳をサカズキに向けたはずだった。が、自然系ロギアの俺の拳がジュウと焼かれてしまった。
「いっ、なにっ!?」
痛みに思わずズザッと後ずさると、無表情な赤犬はふんと嘲笑った。
「...お前ではわしには勝てん」
諦めろと言わんばかりのその表情(かお)は、俺を、ルフィを殺す気に満ちていた。
ここで負けるワケにはいかねぇってのに!!
「エー...スッ...」
不意にルフィの苦しそうな声が聞こえた。
嗚呼、もう体力の限界なんだ...ッ。
大丈夫だ、心配すんなって、守ってやるからなって言ってやりたかった。
けど、残念ながらそれどころじゃねぇ。
「貴様らの血筋はすでに"大罪"だ!誰を取り逃がそうが、貴様ら兄弟だけは絶対に逃がさん!今日こそは必ずその首を取ってやるわい!」