第4章 責任感(田中龍之介/単発)
田中とは、地元のバレーボールクラブで子どもの頃に出会った。
その頃は男女混合でやっていたし、同じポジションを奪い合うライバルだった。
小、中学校が違かったから、男女のチームが別れてしまう頃から会わなくなって。
高校でまさかの再会を果たした。
私は身長が伸びなかったから、選手を辞めていて。
懐かしい気持ちもあって、田中の所属する男バレのマネージャーをやっている。
試合なんかを見ていると、たまにやりたくもなるけど、男子に混ざるなんて出来ないから、諦める為にも丁度良かった。
マネージャーの仕事も慣れてくると楽しいし、やっぱりバレーに関わっている時間が好きだし。
それなりに充実した日々を送っている。
だけど、田中は納得していないみたいだ。
自主練とか、ボール出し以外で付き合わせようとしてくる。
自分だってスパイカーのクセにレシーブ練するからって、わざわざ私に打たせるんだ。
実は今も、その状態な訳で。
ノヤがトス練がてら上げてくれる、ちょっと打ちにくいボールを反対コート目掛けて…。
打て、なかった。
「オイオイ、りこ。練習不足なんじゃねーの?」
「私、選手じゃないもん。」
「言い訳すんな!オラ、もういっぽーっんっ!」
ネットを挟んだ反対側から聞こえるブーイング。
言い返しても会話としては続かず、合図をされてまたボールが飛んでくる。
仕方無く助走をしてジャンプし、今度は打ち下ろす事が出来た。
まぁ、コースの打ち分けをしていないから、田中とは反対の方向にいったけど。
レシーブ練なら、拾いにくい球があってナンボでしょ。
勿論、それは拾われず。
田中がまた怒るかと思ったのに、何故か機嫌が良くなってしまい。
それから、何本もスパイクを打ち続ける事になった。