第1章 嫉妬はスパイス(縁下力/シンデレラ)
気になるけど、無理に聞くのは悪い気がして、暫く無言の時間が続く。
「…悪かった。」
「何で、謝るの?」
「酷い事、したなって。苦しいの嫌だって、先に言ってたのにな。」
やっと、聞こえた声は謝罪で意味が分からなくて。
訊ねると、答えてくれたけど。
寧ろ、酸欠のあの状態がフワフワした感じがして、気持ち良かったし。
もしかして、私がマゾなのかな。
私の特殊な性癖らしきものもあって大丈夫だったから、気にしないで、と伝えるように頭を撫でた。
逸らされていた顔がこちらを向くと、少し苦い表情をしている。
「…正直、今日のはちょっと、腹が立ったんだよ。社長とかと、飲む事になったのは仕方ないけど。
俺の事、あんまり見てくれなかったから。」
「それは、力さんが社長と光太郎の間に居たから…。見てたら、からかわれそうだし。」
「…だよな。でも、分かってても、デートの邪魔された悔しさもあってさ。」
機嫌が悪そうだった訳が分かって、それで苦しいくらいのキスをされた理由が理解出来た。
嫉妬で、あんな風になってくれるなら大歓迎で、今度はわざと妬かせてみようか、なんて思った。
「何で、笑うんだよ。」
思考が表情に出ていたみたいで、突っ込みを貰う。
「何でもない。お休み。」
思っていた事を話したら、また不機嫌になってしまいそうだから誤魔化して目を閉じた。