第2章 ***
(…マジかよ)
あんな地味で陰気なヤツでもオナニーとかすんのか…
いやむしろ、男がいないから欲求不満なのか?
そんな勝手な事を考えている間にも、城山の声は激しくなっていく。
…意外にもその声は俺好みだった。
男をその気にさせるような甘い声。
俺の知っているアイツが出している声だとは到底思えないくらい魅力的で…
(…やべぇ)
不覚にも下半身が反応してしまう。
あんな女の声で勃たせてしまうなんて、俺も相当溜まっているのかもしれない。
(…クソっ……)
そのうち城山の声は止んだが、今度は俺が自慰をする羽目になったのは言うまでもない…
(…また始まった)
それからほぼ毎晩、城山の声が聞こえてくるようになった。
生活音やただの話し声なら苦情のひとつでも出してやろうかと思ったが、まさか「自慰する時の声がうるさい」などと言える訳もない。
(つーかどんだけ飢えてんだよ…)
城山の声を聞きながらオナニーする俺が言えたもんでもないが。
アイツは一体どんな事を想像して、どんな風に自慰をしているのだろう…
無意識に俺はそんな事を考えるようになっていた。
ベッドの上で服を脱ぎ、アソコを自分の指で弄っているのだろうか…
それとも何か厭らしい道具を使って…
(…って何考えてんだ俺は)
あんな女のオナニーを想像してどうする…
俺には天使のようなカノジョの麻衣ちゃんがいるだろ。
そう己を戒め、俺はその日からヘッドホンをしてテレビを観るようになった…
「…何だコレ」
その日俺は、朝から部屋の模様替えをしていた。
今度麻衣ちゃんをこの部屋に呼ぶ事になったからだ。
彼女にこのアパートの事を正直に話したら、「そんな事気にしないよ」と言ってくれたので、勇気を出して誘ってみたのだ。
そうして少しでも部屋の中がマシに見えるよう色々試行錯誤していたのだが、元々この部屋に備え付けてあった和箪笥を移動させると即座に目に止まる物があった。
…壁に貼ってあったガムテープだ。
床下から50㎝程の所に貼ってあったそれ…今まではここに箪笥があったので、すっかりその影に隠れていたのだけれど…
こんなのみっともないし…と思い、ベリッとそれを剥がす。
そして俺は驚愕した。
「…嘘だろ」
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