第2章 ***
それに比べて"俺の"麻衣ちゃんときたら…
(…マジ天使だよなぁ)
カノジョの麻衣ちゃんとはバイト先で知り合い、2ヶ月程前から付き合うようになった。
明るくて優しくて可愛い自慢のカノジョ。
今はまだキス止まりの関係だけれど、そろそろセックスだってしたいと思っている。
けれど俺の部屋には呼べないし、彼女はまだ実家暮らし…ヤるとすればそういうホテルに行くしかないだろう。
(麻衣ちゃんとの為だ…もっとバイト増やすか)
「…つーかお前、案外鈍いヤツだな」
翌日。
昨日麻衣ちゃんとデートした事を大学の友人に話すと、呆れたようにそう返された。
「俺のどこが鈍いんだよ」
「麻衣ちゃんがお前んちに行きたいっつったんだろ?それってもう"そういう事"じゃね?」
「………」
"そういう事"とは勿論、俺ともっと深い関係になりたいという事だろう。
友人にそう指摘され、改めて気付かされる。
「えっ…マジで?」
「そりゃそうだろ。せっかくのチャンスを棒に振ったな」
「ぐっ…」
俺はなんてバカなヤツなんだ…
あんなボロアパートに住んでる事を知られたくないが為に、彼女からのサインを見逃してしまうなんて…!
「やっぱ俺引っ越そうかなぁ…。隣に住んでる女もなんか気味悪いし」
「へぇ…どんな女?」
「挨拶してもろくに返事しねーし、陰気臭くてさぁ…漫画みたいな分厚いレンズの眼鏡掛けてんだぜ?ちゃんと顔は見た事ないけど、どうせすっげーブスだろ」
「ははっ、そこまで言われると逆に見たくなるじゃん」
本当にアイツは謎だ。
年齢不祥だし、学生なのか社会人なのかも分からない……まぁ興味なんてこれっぽっちも無ぇけど。
それからその日は講義が終わった後夜遅くまでバイトをし、いつものようにクタクタになって帰路に着いた。
シャワーを浴び、遅めの夕食を摂る。
と、その時…
『ぁっ…ん、』
「……?」
ふと聞こえてきた女のか細い声。
気のせいかとも思ったが、何度も同じような声が立て続けに聞こえてくる。
(つーかこの声って…)
俺の部屋は角部屋。
つまり隣人はあの女、城山しかいない訳で。
『ぁっ、ぁん…っ…』
「……、」
思わず唾を飲んでしまった。
この声は恐らく、自慰をしている声だろう…
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