第2章 可愛い子ほど甘やかしたい/ky
私がその後、本気を出した彼にぼろ負けしたことは、もはや言うまでもないことでした。
「さーて、早速罰ゲームの件だけど!」
「ひぇぇ」
一体どんなお願い事をされるのだろう。怖さ半分期待半分、私はどきどきと彼の言葉を待った。
「名前で、呼んでほしい。キヨってあだ名じゃなくて、さ」
「……へ?」
予想より随分と可愛らしいお願い事に、思わず気の抜けた声が漏れた。お前は一体どんなお願いをされると思ってたんだ、なんて聞かれると困ってしまうけど。というか、寧ろそれは罰ゲームになっていないような気がする。
「な、なんだよ、駄目、なのか?」
彼は恥ずかしそうに頬を赤らめて、不安げに眉をしょんぼり下げて、私をじぃっと見つめている。
ああ、もう、だめだよ。こういう所が堪らなく可愛くて、結局ついつい彼を甘やかしてしまうのだ。
「ふふっ、やっぱり可愛いねえ、卓哉くんは」
「うぐ、ゲームには勝ったのに負けた気分だ……くそお、うれしい……」
ほらね、言った通り。
見た目はちょっぴり怖い印象を与えてしまうかもしれない。でも、本当の彼は時々意地悪するけど結局優しくて、人見知りで照れ屋さんな、とっても可愛いひとなんです。
「よーしっ、もっかいやろ! 私、ちょっとコツ掴んできたから、次は勝てる気がする!」
「ほほーん、言ったな? 次も罰ゲーム有りにすっから、覚悟しとけ!」
「卓哉くんこそ、後悔するぞー!」
「ぐっ、や、やっぱ、普段通りで良いわ、名前呼びはちょっと……まだ、慣れねえ」
「えー、やだよぉー、卓哉くんがお願いしたのにー」
「……おまえ、割と意地悪い所あるよな」
「ふふ、そうかなあ?」
「こ、コイツぅ……可愛いなちくしょう、後で覚えとけよ!」
彼の仕返しは何倍返しにもなって戻ってくるから怖いんですけど、でも、それも少し楽しみかなあ、なんて思ってしまう私はやっぱり彼に甘いみたいです。
-了-