第2章 ***
*
「そう言えば…飛鳥くん、来週は修学旅行だって言ってたわよね」
情事の後…
俺の腕を枕代わりにしてかすみさんがそう尋ねてきた。
彼女の言う通り、来週には4泊5日の修学旅行が控えている。
「行き先は北海道だっけ?いいなぁ…旅行なんて」
「良くないですよ…その間かすみさんに会えないし」
「何言ってるの…学生の時にしか経験出来ない事なんだから、ちゃんと楽しんでらっしゃい」
「………」
「…返事は?」
「……はい」
「よろしい」
そんな他愛ないやり取りをしながら笑い合う。
俺は情事の後のこんな過ごし方もすごく好きだった。
セックスしている時とはまた違い、胸が温かくなって優しい気持ちになれる…
まるで本当の恋人同士になったような気分で…
「お土産買ってきますね」
「……、うん…」
俺の言葉に少し間を置いて頷く彼女。
さっきまで笑ってくれていたのに、その表情は少し曇っているようにも見えた。
「…かすみさん?」
「っ…ごめん……少し疲れちゃったみたい」
「…大丈夫ですか?」
「誰かさんがあんなに激しくするから」
「……、」
冗談混じりにそう笑った彼女が俺の胸に顔を埋めてくる。
「…飛鳥くんの体……あったかくて気持ちイイ…」
「…かすみさん……」
「…おやすみ」
そのまま彼女は目を閉じてしまった。
俺もその体を抱き締め眠りに就く。
本当はこの時気付くべきだったのだ……彼女の残酷な隠し事に…
「…ただいま」
「おかえりなさい。北海道は楽しかった?」
「…まぁね」
それから1週間後…
修学旅行から帰ってきた俺は、出迎えてくれた母にそう答え土産を手渡した。
家族への土産は食べ物ばかりだ。
かすみさんには小樽で買ったオルゴール……気に入ってくれるといいのだけれど。
(…早くかすみさんに会いたい……)
次はいつ会えるだろう……旅行中も俺は彼女の事ばかり考えていた。
そんな俺に母が「あっ…」と思い出したように声を掛けてくる。
「そう言えばそこにある菓子折りね…隣の水戸さんに頂いたのよ」
「…え……?」
「あのご夫婦…あなたがいない間に引っ越しちゃったのよ」
「………」
.