第19章 いつぞやの会話-前戯編-
「ナナバ…」
「ぁ、そこ、だめ、っ」
「ん?ココ?」
「ん!…ダメだってば!」
「ふ、可愛いね。もうこんなに…ほら」
「もうっ、駄目って、わかってるくせに…!」
「いや、何の事だろう?さっぱりだ…あぁ、きっと馬鹿だから、かな?」
「っ!」
「ナナバ…?」
「……」
「どうしたんだい…?」
「…ごめ、ん」
「何を謝っているんだ?」
「いつも、酷い事…、言ってるから」
「あぁ、それか」
「ごめん、なさい……」
「……ふ」
びくっ
「確かに、毎日言われているな」
「っ、ごめん……」
「でもね、実際、馬鹿なんだよ。こうやって君に言われるよりずっと前から」
「そんな、こと」
「そうだな…君を好きになった時に、同時に馬鹿になったんだ」
「え…」
「あれ以来、君と特別な関係になってからは益々…」
「……」
「それこそ、いつでも君の事を考えてる。朝も、昼も、夜も。夢の中でさえも」
「…そう、なの?」
「あぁ。昨日なんてね、今頃君は何をしているだろうと考えながら扉を引いたら、見事に爪先にぶつけたよ」
「……」
「意識が全部君にいっていたから、加減なんてせずに扉を引いてしまったんだ」
「……」
「驚いたな、あれは。あんなに勢いよく開閉出来るものなんだね」
「大丈夫、だった…?」
「正直、物凄く痛かった…。勿論、涙もでた…」
「……」
「まったく、あんなに幸せな瞬間を消し去ろうとするなんて…反抗的な扉だ」
「ぷっ」
(笑ってくれたな。よかった…)
「今も、痛い?」
「いや、大丈夫だ」
「……」
「ナナバ?」
「ちょっとだけ、見せて」
「あぁ…これでいいかな?」
「痣に、なってる…」
「大丈夫だ、これくらいなんとも、……!」
ちゅ
「ナナバ!何を?!」
「おまじない、かな。早くよくなりますように…」ちゅ
「有り難う。あぁ…気持ちいい…」
「ふふ、変なの。私は何もしてないよ?」
「いいや、君はいつも俺の為に、俺のして欲しいことをしてくれる。俺の欲しいものをくれる」
「エルヴィン…」
「今もだ」
「ちょっと、誉めすぎ…恥ずかしい…」
「ふ…。ナナバ」ぎゅ
「ん…」
「さ、お返しをしてあげようね。君の欲しいモノ、全部…教えておくれ」
fin