第1章 。
私はただ部屋に引きこもり
毛布を頭から被り
震える手に手を宛てがいながら
ただただ帰りを待ち望んだ
その頃から病に犯されていたのかもしれない
景趣を変えていないはずなのに
ずっと肌寒い雨の日が続き
庭に雑草が満ち
長谷部がただ私の部屋の前に正座を続け
歌仙は廊下に雑巾をかけて
不動は大好きなはずのお酒をねだりに来なかった
少しずつ、ほんの少しずつこの本丸は変わっていた
だけど部屋から出ようとしなかった私は何一つ変化に気付かなかった
短刀の声が聞こえないのも
不動が何故酒を飲まないのかも
長谷部がずっと座っているのかも
何も分からぬまま過ごしていた