第1章 。
だけどそんな手紙も2週間と3日目を境に来なくなった
最初の1週間は本丸の刀剣たちも心配をしていた
彼にお金が無くなった
迷ってしまった
手紙の住所が間違っているかも
どの可能性だって否定出来ない
心配する短刀達を1人ずつ抱きしめ安心させた
打刀と脇差にはそんな短刀を落ち着かせるようにと
太刀、大太刀には気を紛らわせる様に遊び相手を
槍には酒を
それでも彼は帰ってこなかった
段々と彼の名前はみんなの口から出てこなくなり
5年が経った今は存在すら無かったかの様に
以前のような本丸に戻っている
彼の存在だけがぽっかり穴が空いたように
例え演戦で彼と同個体の刀がいようと
目も向けやしなかった
もしかしたら見れなかっただけかもしれない
だがこの本丸の皆は彼を案じることにも疲れてしまった
涙は嫌という程流したし
折り鶴や祈りや祈祷
刀剣も私も様々な事をし彼の無事を祈った
でもその願いは聞き入れられなかった
まるで水底で足掻く魚のように
1度だけ日本号が酒を飲みながら
もらしていた話があった
彼と同個体の刀を歴史修正主義者が落としたらしい
だが戦闘部隊は持ち帰ることなく
その刀の為に墓を作ったと。
それ以降だったと思う
誰一人と彼の名を口にしなくなったのは
彼等なりのお別れだったんだと思う
それでも私は待つと決めていた
愛する人を待つ事しか出来ない辛さは到底計り知れなかったがね