第1章 幼馴染み。
もしかして、寝起き……!?いつもサラサラヘアーが少しだけはねていてそれでも様になっている焦凍くん。
テレビよりも、実物の方が格好いい……。何だか、色気も追加されて。ううん、それどころじゃない!
「焦凍くん、覚えてくれたの?」
「当たり前だろ、お久しぶりだな。咲。」
よ、良かった……と安心した束の間、そうしたら中学の時も覚えていると言うこと!?何だか、恥ずかしい気がするがここで見せてはいけない。そう、中学の時は中学の時。みたいな感じでいがなければ!
焦凍くんの所までいくと中学よりも背は高くなっていて、スタイル抜群だ。
「さっき、焦凍くんのお父さんに会って、これ届けて欲しいって!」
「お。」
そう言って差し出したのは、1つの袋。そう豆大福が入っているのだ。
焦凍くんは少し驚いていたが、そのまま受け取ってくれた。良かった……前よりも仲が深まっているように見える。
「感想は焦凍くんのお父さんに伝えてね。焦凍くんにこの和菓子おすすめしたいんだと、張り切っていたんだから。」
「わざわざすまねぇ。」
「いえいえ!」
用件が終わったので、「寝ていたでしょう。ごめんね、起こして。じゃあね!」と言い、エレベーターまで歩こうとする。これが完璧な退場の仕方だと思っていたのでそれをしようとした。
したんだけれども……。
「少し寄って行かねぇか?」
腕を掴まれて、そのままさっきチャイムを押した部屋に入っていく。それがスマート過ぎて考える暇もなった。
頭が働いたのは、玄関に立っているところからだ。
な、何があったのだろうか。全然、追いついてない。何故、幼馴染みの部屋に入って私は豆大福を持っているのだろうか。