第1章 幼馴染み。
久しぶりに会っておかしくないか。というか、久しぶりに会うのに本人の家まで行くとか怖すぎだし、嫌、本当に怖い!
『誰だお前は。』
『幼馴染みの咲だよ。お父さんから頼まれて豆大福届けに来ました。』
『あの親父が豆大福なんて届けるわけねぇだろ。』
となって警察呼ばれて、ネット上に書かれて人生終わり。
そうなりそうで怖い。嫌、彼が覚えてなければそうなる運命だろう。覚えていくれ!!
想像していたら、お目当てのマンションまで着いた。
エレベーターに乗り、階に降りると部屋までの教えてもらった番号を見つつ探していく。
……たちの悪いマスコミよりも凄く悪いことをしているみたい。でも、轟さんに頼まれたんだ。断れる勇気なんてまずない!
というか、焦凍くん良い所住みすぎだろ!
やっぱり、ヒーローの稼ぎか??ピンきりだと聞くけれど、テレビとかではすごく活躍していて"結婚したい男 No.1"という称号もある。まぁ、それだけではないけれど。
あと、あのお父さんもあるだろうな。凄く想像がつく。
部屋に着き、そこには何故かあるチャイム。カメラ付きだ。
ドキドキしながらチャイムを押した。あれ、その前にご本人さんいる??勢いだけで来ちゃったけれど、いるか分からないじゃん。
すぐにスマホを出し、轟さんに連絡をしようとした瞬間、"はい。"と何だかかすれたような声がした。
「わ、焦凍くん。咲です!お久しぶりです、急にすみません…。覚え…!?」
少し早口になってしまったが、名前は言えたので良しとしよう。と思った瞬間、ブチッと通話が切れた音がした。もしかして、覚えてない……?焦凍くんの記憶には、私は残れなかったのか。
何だか、悲しくなり虚しくなり、しかしながら、それをチャンスだと思い、エレベーターまで向かうために方向を変えた。
私ももう忘れて、新しい自分に生まれ変わろう。
うん、そうしよう。
「おい、どこ行くんだよ。」
中学の時よりも低くて、それでも焦凍くんの声が聞こえてきて振り返るととんでもないイケメンが立っていた。
嫌、前からイケメンだったけれど磨きがかかっている。