第1章 幼馴染み。
お会計を済ませて、豆大福が入ったパックの袋を持つ。轟さんとは久しぶりに会った。轟さん家とはご近所さんで息子や娘達と遊んでいたのは良い思い出。
しかし、高校に入ってからは交流がなくなり、会ったら挨拶する程度だった。
「咲ちゃんと顔見知りなんてね……。世の中は狭いもんね。」
「轟さんのお子さんと幼馴染みだったんですよ。」
そう、ただの幼馴染み。それだけだ。幼い頃に遊んでいた。
お婆ちゃんは納得して、轟さんの方を見た。
「それで轟さんはどうなんですか、息子さんとは。」
「……。」
あまり良い表情をしてない轟さん。あぁ、焦凍くんとまだ仲が良くないのか。昔からそうだ、あの2人に何があったかは不明だがあまり仲が良くない。
私が轟さんの話をするとすぐに嫌な顔をして『やめろ。』と何度言われたことか。
「あぁ、前の作戦は駄目だったんだね。」
「作戦……?」
「焦凍にここの和菓子を食べてほしいと思って……。」
あ、ここの美味しさを共有したかっただけか。きっと軽く焦凍くんは轟さんとの会話流しているんだろうな。
確かに、これは他の人に自慢したくなるほどに美味しい。私の場合は美味しすぎて誰も言ってないが、轟さんの場合は教えたいらしい。
「へぇ、そうなんですね。」
「あ、私いい事考えたよ。轟さん。」
お婆ちゃんは私のことを見てニッコリ微笑んだ。
まさか、やめてくれよお婆ちゃん。
「幼馴染みの咲ちゃんが届ければ良いじゃないの。」
私の予想内に収まり、轟さんは「なるほど!」と声をあげた。こんなに予想が当たるなんて……。轟さんとお婆ちゃんから期待の目線で見られた。