第3章 甘いカステラ
「遅え。」
「まだ2分しか経ってないのですが!」
み、みみっちい……。待ち合わせは、行きつけの個室付き居酒屋。そして、指定された席に付くと爆豪さんが座って待っていた。嫌、2分待たせたのは申し訳ないけれど……電車が遅れていたからと言いたかったが言えずに謝り、隣に前の席に座った。
「ここ、完全に悪いところじゃないですか。」
「あ?どういうことだ。」
「だって、あの子見れませんよ……。」
「は、はぁ!?」
動揺を隠してないように声を上げる爆豪さん。
嫌、わかりやす!今の席は個室で、あまり従業員が見えてない。爆豪さんはここの居酒屋の従業員さんに思いを寄せている。……最初は趣味で繋がったのだけども、後々にその従業員さんは私の友達ということに気づいて一緒に同行している。
「よし、ちゃっちゃと決めて呼び出しましょう!生1杯!」
「おっさんかよ。」
呼び出しを押すと、爆豪さんが想いを寄せている波(ナミ)ちゃん(あだ名)がちょこちょことやってきてぱぁと笑顔になる。
「爆豪さんに咲ちゃん!また来てくれたんだね!」
「波ちゃんを見に会いに来たよ!ねっ、爆豪さん!」
「てめぇが馬鹿みたいな失敗してねぇか監視にし来たんだ。」
ずっと思っていたんだけど、素直じゃないよねこの人。
波ちゃんが「意地悪!」と言い、デジタル式の伝票に注文を押していく。
「波ちゃん、いつ上がるの?」
「えーと、あと1.2時間ぐらいは……。」
「1.2時間ね、OK!そこまで爆豪さんとお話しているね。」
軽くウィンクすると「気色わりい」なんて言われたので足を軽く蹴っといた。
波ちゃんも爆豪さんのことが好きで前に『ごめんね、咲ちゃん。私ね、爆豪さんのことが好きになっちゃった。』なんて泣きながら言われて世界が仰天するかと思ったよ。
きっと今日は早めに切り上げてくれるな。なんて予想ができる程に波ちゃんは浮かれていた。
「……てめぇも何か話せや。」
「え、何をですか?」
「恋愛の1つや2つあるだろ!俺のばっかり知っていて腹が立つ!!」
恋愛の1つや2つ……。その言葉を聞いた瞬間、バッと思い出したのは焦凍くんの顔。