第2章 思い出のかしわもち
「すまねぇ、無意識だった。」
と言いながらも手を離さない焦凍くん。スキャンダルになっても知らないよ。私からゆっくりと離そうとしても離してくれない。
「マスコミとか見られたらどうするの?」
「有名人じゃねぇから平気だ。」
「私達からしたら有名人だよ!イケメンヒーローNo.1なんだから!」
なんでこんなにも自分を下に見るんだろうか。その事実にも腹立たしい。人があまり多くない所あまみがあるから良いけれどそれでも意識が低すぎるよ。ニュースとかで"○○が純愛?!"なんていつもやっているし。
駅が近づいて来て、ゆっくりと腕を離された。そして、勢いで入ってしまった改札。
焦凍くんは私の方を見て、目を合わせられた。小さい頃から思っていた、凄く綺麗な目だなと。今もそんな綺麗な目に見つめられている。
「……ここまで来ないと逃げられると思って。」
きゅん。そんな音が似合うように胸が締め付けられた。焦凍くんはまるで捨てられた子犬のような寂しい表情をしていて凄く何だろうか…"可愛い"というので頭の中ごちゃごちゃである。
私の幼馴染はこんなに可愛いのか。こんなに可愛くなったのか。
「……言ってくれれば、いつでも焦凍くんの所に行くよ。」
ホームまで行き、電車を待っている。行き先は焦凍くんの家だ。何も言わなくても、分かる気がした。
何だろうか、それが幼馴染みのテレパシーみたいな感じなのかな。
焦凍くんは帽子を深く被っているおかげか今のところバレてなく普通に電車に乗って最寄りまで行った。