第2章 思い出のかしわもち
「咲!」
まるで花が咲いたように嬉しそうにする焦凍くん。そう、焦凍くんがここ和菓子屋あまみにやって来たのだ。
お婆ちゃんは察しが良いのか「轟さん家の息子さんね!」と声を嬉しそうにあげた。
「いつも親父が、お世話になっています。」
「嫌々……、聞いていたとおりに美人さんだねぇ。」
お婆ちゃんと話しているから静かに、店から出ようとした所焦凍くんに腕を掴まれた。焦凍くんをみるとなんでもない顔でお婆ちゃんにおすすめを聞いている。
嫌々、なんでそうに普通の顔しているの?お婆ちゃんもなんでそんなに普通に接客しているの?もしかして、私だけ知らされてないとか?
「咲がいるとは思いませんでした。」
「咲ちゃんはねぇ、いつも常連客で大体2週間に一度来てくれるの。その時には、ちゃんと定時で来てくれるらしくて……。」
「おばちゃん、嬉しいわ。」と言いながら、焦凍くんに柏餅が入った袋を渡す。お婆ちゃんたら、何を話しているの。相変わらず、腕は掴まれたまま。焦凍くんの表情を見ても普段と変わらず格好いい顔をしている。
「ありがとうございます。」
「こちらこそ、ありがとうございました。では、またのご来店をお待ちしております。」
されるがままに和菓子屋から焦凍くんと出て行った。マスクをして、帽子を被っているけれど……。というか、よくお婆ちゃん気づいたな。やっぱり、左目で分かったんだ。
小さい頃、気付いたら左目に包帯を巻き、外れたと思えば皮膚はただれてまるで火傷をおったようになっていたのを思い出す。
「……焦凍くん、どうしたの?」
思い出よりも最初にこの事を聞かなければ。
相変わらず、腕を掴まれてそのまま着いていったけれどどこに行くのかも分からなくなり不安でそう聞いて見ると私の方を向いて「あ。」と声を出した。