第2章 思い出のかしわもち
「お邪魔します!」
相変わらず綺麗な部屋。また焦凍くんの家に行き、リビングに通してもらって図々しくもソファに座らせてもらった。
あれから電車に乗り、焦凍くんの最寄り駅に降りてそのまま5分あるいてマンションに着いた。ずっと思っていたのだけれども、凄く良い場所に住んでいるな。駅から近い。
私の家と言うと、歩いて20分以上かかる。
「今日は柏餅か。」
「もうすぐ子供の日だからね。いただきます!」
パクっと柏餅を口に頬張るとこしあんの滑らかさが舌に直接来た。柏餅は比較的に皮がつるつるしていて餡子が伝わりやすい。大福とかは片栗粉をまぶしているので粉っぽいが柏餅は全然それがなく比較的に食べやすくなっている。
「うーん、美味しい。」
やっぱり、お婆ちゃんの和菓子は最高だ。2口目に突入するとやっぱり横から目線を感じた。
横を見ると笑っている焦凍くん。小さく笑っているがそんな笑っている姿が様になっていて可愛い。
何だか昔に戻ったようだった。
「……ねぇ、焦凍くん。柏餅って懐かしいよね。覚えている?昔、食べたこと。」
小さい頃、轟さんから『子供の日だから、焦凍と一緒に食べろ。』と言われて柏餅を4つ貰った。それを一緒に頬張った思い出。焦凍くんは、目に大きな傷を負っていたあの時。
しんみりとした雰囲気になり、私は2個目の柏餅に手を付けた。本当に懐かしい、焦凍くんはその時はずっと良くない表情をしながら食べていたっけ。
「……忘れるわけねぇだろ。咲との思い出は。」
……ねぇ、焦凍くん。私は失恋した時、ずっと昔に戻りたい。と願っていたんだよ。今、何だか願いが叶ったようで凄く嬉しいんだ。
喧嘩して、後に冬美ちゃんに助けられて仲直りして、一緒に遊んで……そんな日々がまた戻るかな。子供っぽいか。
「そう言ってもらえて光栄だし、嬉しいよ。」
また、交流を深めて、あなたに恋をしたい。