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月の囁き

第8章 曖昧な関係


信ちゃんのおかげで

なんとか平常心を取り戻して

洗面所から出ると

扉のすぐ側に


「何してんねんお前は…」


なんて少し不機嫌そうなすばるくんが立っていて


「いや…あの…」

なんてしどろもどろになる私の手を握り

店を出てしまう…


全然こっちを見てくれない背中に


「いいんですか…さっきの人…

まだ話したそうにこっち見てましたけど…」


そう話しかけると


すばるくんは前を向いたまま


「関係ないし…どうでもええわ…」


そう言って家までの道を歩き続ける…


家についてからも

全然喋ってくれないすばるくんを横目に

シャワーを浴びて寝る準備をして

先にベッドに入っていたすばるくんの隣に

潜りこむと

いつもなら抱きしめてくれるのに

今日は…


私に背中を向けたまま顔さえ見せてくれなくて


向けられた背中が

私を拒絶してるみたいで

悲しくて涙が溢れ出してくる…


「すばる…くん…

ごめん…な…さい…

お願い…だから…嫌いに…なら…ないで…?」


そう途切れ途切れの声で呟くと…


小さなため息と一緒に

すばるくんは私の方に体を向けて


「泣くぐらいなら

勝手に俺から離れるんちゃうわ…」


そう言って

涙でぐしゃぐしゃな私の顔を

服の袖で拭ってくれる…


「怒ってないんですか…?」


そう聞いた私にすばるくんは


「別に…怒ってはないけど…

ただ…せっかくのデートやったのに

邪魔が入ってイライラしただけって言うか…


お前はトイレ行ったままなかなか帰って

こーへんし…」


そう言ってまた不機嫌に

私に背中を向けようとする…


だから慌てて


「嫌です…

そっち向かないで下さい…」


そう言ってすばるくんの体にぎゅっと抱きつくと


また小さなため息が聞こえて



「顔上げろ…」


そんなすばるくんの言葉に

ゆっくりと顔を上げると



その瞬間

すばるくんの顔が私の目の前に近づいた…
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