第8章 曖昧な関係
ただ車を運転しているだけで
こんなにもかっこいい人がこの世にはいるんだ…
そう感心しながら
運転中のすばるくんの横顔を見つめていると
「どっか行きたいとことかあんの…?」
そう言って前を見つめていたすばるくんの顔が
私に向けられる
なんだか恥ずかしくて
「わ…たしはあれです。
すばるくんと一緒ならどこまででも!」
なんてわけのわからないことを口走りながら
首を180度ぐりんと回し窓の外に
顔を向けると
「さっきまで人の顔ヨダレ垂らしながら
見つめてたくせに何やねん笑?」
なんてすばるくんの笑い声が聞こえてくる
だから慌てて
「ヨダレなんか垂らしてませんよ?
かっこよすぎて垂れそうでしたけど、
必死にがまんしたもん!!」
そう言って鼻息荒くすばるくんを見ると
「あほか笑」
そんな声と一緒にすばるくんは
私の頭をくしゃくしゃとかき混ぜる
ああ…
まただ……
すばるくんは
いつだって簡単に私をドキドキさせる
私だってすばるくんを
ドキドキさせたいのに
なぜたかそれはとてつもなく難しい…涙
だから勇気を出して
「私…この手が大好きです…」
そう言って
私の髪に触れる手を捕まえて
その手の甲に唇で触れて
そっとキスをしてみる…
私の手の中で驚いてぴくりと跳ねた
手をそのままぎゅっと握りしめながら
恐る恐る顔を上げると
そこには
少し赤くなった耳で前を見つめながら
運転するすばるくんがいた