第1章 私が死んだ日
さっきまでのにこやかな笑顔を
どこに置いてきたのか
鬼のような形相で
私の頭を掴む信ちゃんを前に
「天使みたいな格好してるくせに
中身は悪魔だ…(涙)」
そう泣きそうになりながら
小さな声で呟くと
自称天使の信ちゃんは
ふはっと息を漏らしながら
小さく笑って…
「お前が人の話も聞かんと
勝手に突っ走るからやろ(笑)!!
それにお前が今ここから出たとこで
お前のことは誰にも見えへんぞ?
解りやすくいうと
今のお前は透明人間や…」
そう言うと
私の体をふわりと持ち上げ
ベッドの上に座らせる…
「私が…透明人間…?」
「そうや!
お前ここにくる前のこと
覚えてるか?」
「えっと…
学校で居残りをさせられて…
ライブに遅れそうで
必死に走ってて…
それで…
信号が青に変わって
走りだしたら…」
「うん…ほいでどうしたんや…?」
「空を飛んだ…」
「…まぁ…そうやけど…(笑)
お前はその信号で
信号無視で突っ込んできた車に
残念ながら思いきりよく引かれたんや…
唯一良かったこと言うたら
痛みも何も感じず
あっさり逝けたことぐらいやな?」
「………信ちゃん…
その冗談…全然笑えないんだけど…?」
「誰やねん…その信ちゃんて…?
俺は信ちゃんやなくてただの天使で
笑える話をした覚えはないぞ?
全部真実や!」