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月の囁き

第8章 曖昧な関係


「な…んですか…この状況…は!?」

少しゴツゴツした膝の上に乗る自分の頭に
訳もわからず慌てて起き上がろうとすると

そんな私の頭を信ちゃんの手が抑えて


「飲んでても飲んでなくても
そんなんはどーでもええから

今は動かんとじっとしとけ笑」


そんな言葉と一緒に
ふわふわと私の頭を撫でる…


優しく髪に触れるその手の感触に
強張っていた体から力が抜けていって


信ちゃんの膝の上で
自分の顔を手で覆いながら

一つ大きなため息を吐き出す…



「ねぇ…信ちゃん…?」


そう小さく呼びかけた声に


「ん…?」


と短い返事が頭上から降ってくる…





「天使の力でさ…

見た目だけじゃなく
中身も大人にって出来ないの…?」



「それは…

どういう意味でしょうか笑?」



「どうって…
そりゃ言葉のまんまだよ笑?

すばるくんに

もっともっと近づきたいのに
どうしたらいいのか全く解らない…

見た目は立派な大人なのに
心だけ全然追いついてこなくて


大好きなのに
その伝え方も解らない


もっと強くならなきゃいけないのに…

そうじゃなきゃ
すばるくんの側にいられないのに…


そう解ってるのに…

またこうやって子供みたいに…」



私が話している最中も

優しく髪に触れ続ける信ちゃんの手に
促されるように

溢れてきた涙を手のひらで
必死に拭っていると



「やったら…
やめたらええやんけ…」


そんなやけに
静かな声が聞こえて来て


ゆっくりと顔に置いていた手を外すと



私なんかよりずっと
苦しそうな顔をした信ちゃんの顔が
そこにあって…


「どうしたの…?どこか痛い?」


そう言って信ちゃんの
ほっぺたに手を伸ばし触れると


その手に信ちゃんの手が重なって

ゆっくりと信ちゃんの顔が
目の前に近づいてくる…



"おや?"


なんて予想以上に近づいてくる

信ちゃんの顔に驚いていると



その瞬間ガチャリと

扉の開く音が部屋の中に響いた…

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