第4章 猫になりたい
「これだから天使ってやつは…」
危うく大事な大事なファーストキスを
奪われかけ
思いきりよく信ちゃんをひっぱたき
ヒリヒリと痛む右手を睨みながら
そうぽつりと呟くと
そんな私の顔を不思議そうに覗き込み
「お前は朝からずっと
何を一人でぶつぶつ言うてんの…(笑)?」
なんてすばるくんは
可笑しそうに笑う…
私より少し大きなすばるくんの歩幅に
置いていかれないように
小走りになりながら
「そんな風に笑うけど
私には全然笑い事じゃないんですよ…?
始めてのキスを誰とどこでするかは
すごく大切なことだから
私はすばるくんとがいいのに…」
そう小さな声で
ぶつぶつと呟いていると
そんな私の目の前に
突然伸びてきたすばるくんの手が
私の手を掴むと
「小さい上に足が遅い…
迷子になりそうやから
これはリードの代わりや(笑)」
そう言って笑いながら
私の手を繋ぎ歩き始める…
繋いだ手から伝わる
すばるくんの手の温かさに
私だけに向けられるその笑顔に
どくんどくんと
胸がうるさいぐらいに騒ぐ…
私は幽霊で…
人間擬きで…
すばるくんにとっては
捨て猫で…
それでもこの瞬間私は
他の何者でもなく
1人の女の子として
すばるくんに本当の恋をしたんだ…